
いまの人材採用は、本当に難しくなりました。
新卒でも中途でも、採用単価は上がる一方。媒体に出しても反応が弱い。エージェントを使えば採れることはあるけれど、費用負担が重い。ダイレクトリクルーティングも運用の手間がかかる。そのうえ、せっかく応募が来ても、選考途中で離脱される。内定を出しても承諾が返ってこない。
採用担当としては、もう十分すぎるほど実感していることだと思います。
だからこそ、これからの人材採用では考え方を切り替える必要があります。ポイントはシンプルです。どう集めるかだけではなく、どう選ばれるかに本気で向き合うことです。
その中心になるのが、自社の採用ページです。
「採用サイトはあるけど、会社概要と募集要項が載っているだけ」という状態では、いまの人材採用では勝ちにくい。逆に言えば、採用ページの設計と情報発信を見直すだけで、応募数も質も変わる余地はかなりあります。
ここでは、現在の人材採用市場で何が起きているのかを整理したうえで、今後の採用活動で取り組むべきことを、ステップ形式でまとめます。媒体やエージェントを完全に否定する話ではありません。ただ、そこに依存しすぎる前に、自社で積み上がる採用基盤を作るべきだという話です。
目次
- Step 1: まず、人材採用の現状を正しく理解する
- Step 2: 人材採用コストの高騰を前提に、打ち手を見直す
- Step 3: 採用ページは「会社案内」ではなく「選ばれる導線」に変える
- Step 4: 人材採用で応募を増やす、採用ページの8つの必須要素を整える
- Step 5: 応募導線は外に逃がさず、自社サイト内で完結させる
- Step 6: 採用ページを作っただけで終わらせず、アクセスを集める
- Step 7: 人材採用は「応募数」だけでなく、内定承諾まで見据えて設計する
- Step 8: 自社の情報発信を「後回し」にしない
- Step 9: 生成AI時代の人材採用を見据え、検索される情報を整える
- Step 10: これからの人材採用で取り組むべきことを整理する
- Step 11: 人材採用を外注依存から、社内資産へ変えていく
- Step 12: 最後に。人材採用は、選考の前にすでに始まっている
Step 1: まず、人材採用の現状を正しく理解する
今の人材採用が苦しい理由は、単に人手不足だからだけではありません。採用市場そのものの構造が変わってきているからです。
ひと昔前の採用では、ナビサイトや求人媒体に掲載すれば、ある程度まとまった応募が入りました。企業側は集まった応募をさばくことに集中していればよかった。言い方を選ばずにいえば、待っていても人が来る時代があったわけです。
でも、今は違います。
特にコロナ禍以降、求職者の動き方が大きく変わりました。以前のように、とりあえず何社も一括エントリーして受けるスタイルではなく、
- 気になる会社を絞る
- 採用ページやSNSで詳しく調べる
- 納得できた会社だけ応募する
- ダメならまた別の候補を探す
こういう行動が当たり前になっています。
つまり、今の人材採用では、応募の前に選ばれないといけない。応募が来てから勝負が始まるのではなく、応募される前から勝負が始まっているんです。
ここを見落とすと、「媒体の効果が落ちた」「応募数が減った」「母集団形成が難しい」で止まってしまいます。でも本質はそこだけではありません。求職者が応募前に企業を精査する時代になった以上、企業側も情報発信の質を上げないといけないんです。
Step 2: 人材採用コストの高騰を前提に、打ち手を見直す
今の人材採用で多くの企業が頭を抱えているのが、採用コストの高騰です。
新卒でも中途でも、採用単価100万円という話は珍しくありません。職種によってはさらに上がる。特に専門職や競争の激しいポジションでは、「採れればいいけど、このコストが続くのは厳しい」と感じている企業も多いはずです。
採用手法自体はたくさんあります。
- ナビサイトなどの掲載型
- 検索型求人
- ダイレクトリクルーティング
- エージェント活用
- リファラル採用
どれも有効な場面はあります。ただし、どの手法にもコスト、運用負荷、再現性の課題があります。
ここで一度立ち止まって考えてほしいんです。
もし自社の採用ページに、十分な数の求職者が直接来て、納得して応募してくれるなら、他の施策への依存はかなり減らせるはずです。
もちろん、いきなりすべてを直接応募に切り替えるのは現実的ではありません。でも、今後の人材採用で目指すべきなのは、直接応募比率を上げることです。
直接応募が増えると、採用単価を抑えやすくなります。それだけではありません。
- 応募時点で理解度が高い
- カルチャーとの相性を見極めた上で応募している
- 選考途中の離脱が減りやすい
- 採用ノウハウが社内に残る
つまり、今後の人材採用は「どこに出稿するか」だけの話ではなく、「自社で選ばれる仕組みを持っているか」が重要になっていきます。
Step 3: 採用ページは「会社案内」ではなく「選ばれる導線」に変える
多くの企業の採用ページが、実はここで止まっています。
会社の歴史、事業内容、募集要項、福利厚生。もちろん大事です。でも、それをただ並べただけでは、いまの人材採用では弱い。
なぜか。
求職者は最初から細かい情報を読み込むわけではないからです。まず見ているのは、「この会社、自分に合うかも」「ちょっと気になる」という感覚です。その入口が弱いと、その先の事業説明や制度紹介まで読んでもらえません。
だから採用ページは、単なる情報置き場ではなく、興味を生み、理解を深め、応募につなげる導線として設計する必要があります。
大切なのは順番です。
- 最初に興味を持ってもらう
- 次に自分との相性をイメージしてもらう
- その上で仕事内容や働き方を理解してもらう
- 最後に応募のハードルを下げる
この流れができていない採用ページは、情報量が多くても応募につながりにくい。逆に、この導線が整っているだけで、人材採用の成果は変わります。
Step 4: 人材採用で応募を増やす、採用ページの8つの必須要素を整える
採用ページを改善するうえで、特に重要なのが次の8項目です。これは、応募につながりやすい採用ページに共通して見られる基本要素です。
- 採用キャッチコピー
- ファーストビュー
- 採用メッセージ
- 事業内容の説明
- 社員インタビュー
- 人事制度・働き方の情報
- 募集要項
- 応募直前のひと押し
ひとつずつ見ていきます。
1. 採用キャッチコピー
最初に目に入る言葉です。ここがぼんやりしていると、採用ページ全体が埋もれます。
いいキャッチコピーは、かっこいい言葉である必要はありません。重要なのは、どんな人に来てほしいかが伝わることです。
たとえば、個性の強いベンチャー気質の人に来てほしいなら、それが伝わる言葉にする。真面目さを評価する会社なら、そこを正面から打ち出す。水道管工事のような仕事でも、表現次第で「自分に合うかも」と思ってもらえる入口を作れます。
人材採用で大事なのは、万人受けする言葉より、合う人に刺さる言葉です。
2. ファーストビュー
ページを開いて最初に見える範囲です。ここで会社の雰囲気が伝わるかどうかは非常に重要です。
写真、デザイン、言葉の組み合わせで、「どんな会社なのか」が一瞬で伝わる状態を目指してください。無難で整ったページよりも、らしさが出ているページの方が人材採用では強いことが多いです。
3. 採用メッセージ
キャッチコピーで興味を持ってもらったら、次はメッセージです。
ここでは、
- なぜ仲間を求めているのか
- どんな価値観を大事にしているのか
- どんな人に来てほしいのか
を、まっすぐ伝えます。
事業説明より先に、ここを置くのがポイントです。先に「誰を求めているか」が伝わると、その後の情報も自分ごととして読んでもらいやすくなります。
4. 事業内容の説明
ここでようやく、何をしている会社なのかを詳しく理解してもらいます。
ただし、企業目線の説明だけでは不十分です。求職者が知りたいのは、
- どんな事業に関わるのか
- 社会にどう役立っているのか
- 自分の仕事がどうつながるのか
という点です。
人材採用では、会社説明をそのまま載せるのではなく、仕事理解につながる形に翻訳する必要があります。
5. 社員インタビュー
これはかなり重要です。求職者が知りたいのは、制度の一覧より「中で働いている人のリアル」だからです。
インタビューでは、
- 入社理由
- 仕事のやりがい
- 苦労したこと
- 成長実感
- 職場の雰囲気
を伝えると効果的です。
可能であれば、テキストだけでなく動画も有効です。社内の空気感は、動画の方が伝わりやすいからです。ただし、動画を見てもらうには、前段のキャッチやメッセージで興味を持ってもらう必要があります。順番が大切です。
6. 人事制度・働き方の情報
今の人材採用では、ここを軽視できません。
求職者は仕事内容だけでなく、働き方や制度も見ています。たとえば、
- 評価制度
- キャリアパス
- 教育体制
- 働き方の柔軟性
- 健康経営や福利厚生の考え方
こうした情報は、応募意思にも、内定承諾にも影響します。
「制度はあるけど載せていない」は、もったいない。逆に、制度が整っていないなら、それをどう改善していくのかまで含めて伝える姿勢が大事です。
7. 募集要項
ここは当然必要です。ただ、募集要項だけがしっかりしていても応募は増えません。
募集要項は、あくまで意思決定のための確認情報です。応募を生むのは、その前の文脈です。ここを勘違いすると、仕事内容や条件を細かく書いているのに反応がない、という状態になります。
8. 応募直前のひと押し
意外と抜けがちなのがここです。
応募フォームの前に、「ここまで読んでくれてありがとう」「ぜひあなたに来てほしい」という一言を入れるだけでも、印象は変わります。
人材採用は最後まで人と人です。フォーム入力は事務作業ですが、応募の決断は感情で動く部分も大きい。最後に背中を押す設計を入れておくべきです。
Step 5: 応募導線は外に逃がさず、自社サイト内で完結させる
採用ページを作っていて、よくあるのが「応募はこちら」として外部のナビサイトに飛ばしてしまうパターンです。
これ、かなりもったいないです。
せっかく自社の採用ページで興味を高めても、外部サイトに移った瞬間に集中が切れます。他社求人も目に入る。離脱も起きやすい。応募の熱量が下がってしまいます。
だから、今後の人材採用では、採用ページの中で応募を完結させるのが基本です。
応募フォームはシンプルで構いません。むしろ、入力項目が多すぎると離脱要因になります。まずは応募のハードルを下げる。その後の選考で必要な情報を補えばいい。こうした考え方の方が、今の人材採用には合っています。
Step 6: 採用ページを作っただけで終わらせず、アクセスを集める
採用ページを整えたら、次に必要なのは集客です。
いくら良いページを作っても、誰にも見られなければ応募は生まれません。ここはECサイトの考え方とかなり似ています。いい売り場を作るだけでは売れない。必要なのは、誰に来てもらうかの設計です。
今の人材採用では、SNSなどを活用して、自社が求める層に採用ページへ来てもらう発想が重要になります。
ここでのポイントは、単にアクセス数を増やすことではありません。
自社に合う人に来てもらうことです。
たとえば、ベンチャー志向の人に響くメッセージを出しているのに、まったく違う層ばかり流入しても意味がありません。採用ページの設計と、流入させるターゲットが一致して初めて、直接応募は増えていきます。
今後の人材採用では、媒体掲載のような一方向の待ちの施策だけでなく、採用ページに対して能動的に集客する考え方がますます必要になります。
Step 7: 人材採用は「応募数」だけでなく、内定承諾まで見据えて設計する
採用活動で見落とされがちなのが、応募獲得後のフェーズです。
今は応募が入っても、途中で辞退されることが珍しくありません。内定を出しても承諾が戻ってこないことも増えています。
なぜか。
求職者は複数の内定を持って比較しているからです。平均的に複数社の選考や内定を並行して進める時代では、企業側が思っている以上に、最後の比較検討がシビアに行われています。
そしてこのとき、改めて見返されるのが採用ページやSNSです。
つまり、採用ページは母集団形成のためだけにあるわけではありません。応募後の不安解消、選考中の志望度維持、内定承諾の後押しにも効いてきます。
今後の人材採用では、採用ページを選考前だけのものとして扱わないことが大事です。選考全体を通じて、求職者の意思決定を支えるコンテンツとして位置づけてください。
Step 8: 自社の情報発信を「後回し」にしない
ここが今後の人材採用でますます重要になります。
多くの企業は、採用がうまくいかないと、まず外部施策を増やそうとします。媒体を増やす、スカウトを増やす、エージェントを増やす。もちろん必要な局面はあります。
でも、その前にやるべきなのが、自社のアウトプットです。
自分たちは何をしている会社なのか。どんな人に来てほしいのか。どんな働き方で、どんな価値観を持っているのか。何を評価し、どんな人が活躍しているのか。
これを外に出していない企業は、今後の人材採用でどんどん不利になります。
昔は、媒体の募集要項だけでもある程度採れました。でも今は、そこだけでは判断されません。求職者は自分で調べます。比較します。納得してから応募します。
だから、発信していない会社は、存在していないのと近い状態になりやすいんです。
Step 9: 生成AI時代の人材採用を見据え、検索される情報を整える
ここは、これからの人材採用でかなり大きな変化になるはずです。
すでに求職者の中には、生成AIを使って就職活動や転職活動を進める人が出てきています。履歴書や職務経歴書の相談をするだけではありません。自分のプロフィールや希望条件をAIに読み込ませて、「自分に合う会社はどこか」と聞く。そういう行動が始まっています。
そのときAIが参考にするのは、基本的にWeb上に公開されている情報です。
つまり、自社の採用ページや関連情報が整っていなければ、AIにも見つけてもらいにくい。逆に、採用ページがしっかり作り込まれていれば、今後の人材採用で新しい接点が生まれる可能性があります。
この流れは、おそらく強まります。
だからこそ、「採用ページはあとで整えよう」は危険です。今のうちから、自社の情報をWeb上でわかりやすく整理し、伝わる形で発信していく必要があります。
Step 10: これからの人材採用で取り組むべきことを整理する
ここまでの話を、実務で動ける形にまとめます。今後の人材採用で優先して取り組みたいことは、次の5つです。
1. 採用ページを、募集要項中心から導線設計中心に変える
会社情報を並べるだけでは不十分です。興味喚起から応募までの流れを設計し直してください。
2. 「誰に来てほしいか」を言語化する
万人受けを狙うより、自社に合う人に伝わる言葉を選ぶことが重要です。キャッチコピー、採用メッセージ、インタビュー、すべてがここにつながります。
3. 社員のリアルと働き方の実態を見せる
今の人材採用では、制度の一覧よりも、働く人の具体像が重要です。社内の空気感が伝わる情報を増やしてください。
4. 応募導線をシンプルにし、サイト内で完結させる
せっかく高まった応募意欲を、外部リンクで逃がさないこと。直接応募比率を高める設計が、採用コストの抑制にもつながります。
5. 発信を継続し、検索やAIに見つけられる状態を作る
採用ページは一度作って終わりではありません。更新し、蓄積し、見つけてもらえる状態を作ることが、これからの人材採用の土台になります。
Step 11: 人材採用を外注依存から、社内資産へ変えていく
媒体もエージェントも、必要なときには使えばいいと思います。問題は、そこに頼るしかない状態です。
その状態では、採用市場が厳しくなるほどコストは上がり、ノウハウは外に残り、毎年また同じ悩みを繰り返すことになります。
これからの人材採用で本当に重要なのは、自社に採用ノウハウがたまる仕組みを持つことです。
採用ページを整えること。情報発信を続けること。直接応募を増やすこと。これらは派手ではありません。でも、一度積み上がると、採用活動の再現性が変わります。
「いい人をたくさん採りたい」という思いは、どの企業でも同じです。
だからこそ、今の市場環境を前提にしながら、自社が選ばれるための土台を作る必要があります。これが、これからの人材採用で最も現実的で、最も強い打ち手だと私は考えています。
Step 12: 最後に。人材採用は、選考の前にすでに始まっている
今の人材採用では、応募が入った時点で勝負が始まるわけではありません。
その前に、求職者は調べています。比べています。自分に合うかを見ています。そして、応募する会社を絞り込んでいます。
つまり、採用活動の第一歩は、募集開始ではなく、情報発信です。
採用ページを見直すことは、デザインを整えることではありません。自社の魅力、価値観、働く人、仕事の意味を言語化し、求職者に伝わる形にすることです。
そこが整えば、応募は変わります。選考中の温度感も変わります。内定承諾率にも効いてきます。そして何より、採用が「運任せ」ではなくなっていきます。
厳しい時代の人材採用だからこそ、外に任せるだけではなく、自社で選ばれる力を育てていく。その取り組みが、これから先の採用活動を大きく左右するはずです。